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re:Invent 2024を終えて、AWS Graviton 促進について考えた

CTOの原口です。

Japan AWS Ambassadors Advent Calendar 2024の10日目の記事です。

re:Invent 2024 お疲れ様でした!

あいにく私は現地参加はせず、日本からの参加でしたが、オンラインもしっかりと聞けるのでいいものですね。Monday Night Live with Peter DeSantis キーノートですが、今回はハードウェアの話が多くとても面白かったです。

割とほとんどの時間がGravitonにフォーカスされていて、Gravitonが大好きな私としてはすごく嬉しかったです。AWS Gravitonの誕生秘話からGravitonに対する思いやComputeへの考え、非常に共感します。

という事で、改めて我々がAWS Gravitonをどのように活用しているかをMonday Night Live with Peter DeSantis キーノートの内容も添えながら、ご紹介できればと思います。

AWS Gravitonのおさらい

  • AWSが作ったARMベースのCPU
  • 多くのワークロードにおいて今よりパフォーマンスが向上する
    同世代の同一スペックインスタンスに比べてパフォーマンスがよくなる傾向にあります。
  • 優れたエネルギー効率によるコスト削減
    同世代の同一スペックインスタンスに比べて20%ほど費用がお安く提供されています。
  • サステナブル
    エネルギー効率と関連しますが、エネルギー効率がよいという事は電力使用量が少なくCO2の削減となるため環境に優しいCPUと言えます。

AWSクラウドでリソースを作成する時、大きく分けて2つの選択肢があります。それは、IntelやAMDの「x86アーキテクチャ」か「ARMアーキテクチャ」のどちらかです。AWS Gravitonでは、ARMアーキテクチャのほうを採用しています。現在、AWS Gravitonはすでに4世代までリリースされており、かなり成熟したCPUとなっているため、知らないという方も少なくなってきているかもしれませんね。

基本的に、Linux上で動作するものはすべてGravitonとx86の両方で動作します。オープンソースでLinuxベースであればほぼ間違いなくGravitonで動作しますし、パッケージも揃えられています。PHPやPythonなどのインタープリタ言語は、両方用のインタープリタが存在するため、簡単にAWS Gravitonに移行可能です。

※実際のGraviton移行については、以下のgithubを一読する事をおすすめします。

https://github.com/aws/aws-graviton-getting-started

re:Invent 2024 Monday Night Live with Peter DeSantisキーノート

Monday Night Live with Peter DeSantis キーノートにてデイブ・ブラウン氏が登壇しました。ここでは、AWS Gravitonの開発秘話が語られました。

AWS Graviton を初めて発表した時は「最速のCPU」を作る目的では無く、データセンタにおけるARMアーキテクチャの利用を活性化させる事が目的だったと言います。

その後、Graviton2、3、4と最新のGravitonが作られるわけですが、Graviton性能をどのように最適化してきたかの話が紹介されました。

これまでのCPUでは、マイクロベンチマークを用いて局所的な部分に対しストレステストを行い、そのパフォーマンス性能を上げる事に執着されてきました。これは「マラソンのトレーニングを100m走で行うようなもの」と言います。

AWSでは、実際のワークロードのパフォーマンスが最優先されているという事でした。プロセッサの設計においての目標はベンチマークで優位に立つことではなく、実際の顧客のアプリケーションで優れた性能を発揮することだといいます。

実際、この言葉に偽りが無い事はワークロードで証明されています。私の方では、Gravitonを使ったマイクロベンチマークを行い、その結果をブログで記載しています。この結果ではGravitonがあらゆる領域でNo.1の性能を誇るパワフルなCPUというわけでは無いという事がわかります。しかし、実際のワークロードであるLAMP環境(WordPress)を利用したベンチマークでは圧倒的な性能を誇りました。(r7g = Graviton3、r7i = Intel、r8g = Graviton4)

今まで私が行っていたベンチマークの結果と実際のワークロードでの高パフォーマンス、AWSの考え、そして自分がなぜAWS Gravitonが好きなのか、が合わさった感じがして非常に嬉しかったです。もともとARMのファンということもありますが、こう見るとデータセンタにおけるARM利用の一人者もAWSだったんだなと感心しました。

また、Nitro System + Graviton4のセキュリティに関しても言及がありました。

Nitro Systemは秘密鍵をハードウェアにロックし、ハードウェアベースのセキュリティを実現している事。そしてこれがGraviton4へも拡張されており、システム間の相互信頼を可能としたという事です。

つまり、Nitro System + Graviton4ではチップの製造時から稼働まで全ての瞬間でハードウェアベースの暗号化されたセキュリティが実現されているという事です。

これも独自のカスタムシリコンだから実現した事かもしれないですね。

Apple も AWS Gravitonを使っている!

翌日のキーノートでは、AppleのMLおよびAI担当シニアディレクターのブノワ・デュパン氏が登壇しました。登壇ではSiri、マップ、AppleMusicなどでAWSを利用しているとし、x86インスタンスからGravitonに移行した事で検索が40%効率化されたと説明がありました。

もともとAppleもMacBookProなどのCPUにARMアーキテクチャを採用しており、「ARMアーキテクチャ」の躍進の立役者だと思いますが、そのAppleもデータセンタCPUとしてはAWS Gravitonを選択するんだなと驚きました。

シーズでのAWS Gravitonにおける実際の事例

こちらは弊社のサービス「デカメール」のRDSをGravitonへ変更した事例です。
コストも削減されましたが、Graviton導入後にCPU使用率が大きく下がっている事がわかります。

AWSマネージドサービスにおけるAWS Gravitonの導入は非常に簡単で、例えばこの例のようなRDSであればインスタンスタイプをGraviton(g系)へ変更するだけです。

たったこれだけの作業で、デカメールでは高スペックと低コストのメリットを享受できました。

AWS Gravitonの導入が進まない原因

さて、このように素晴らしいAWS Graviton CPU。特にマネージドサービスにおいてはわずかな手間で大きなメリットを享受できるのですが、実際の案件などではなかなか導入が難しいのが現実です。

もちろん、x86アーキテクチャに依存したベンダーソフトなどを動かす必要があるなど、どうしてもAWS Graviton導入ができないというケースは存在しますが、それ以外の要因としては以下のような原因が多くあります。

  • 問題なく動いているものを変更する事への不安がある
  • モノリスEC2で何が動いているか把握できていない

ここが私の考えるAWSパートナー企業としてビジネスの武器となりうる部分と考えています。

AWS Gravitonの提案を顧客と信頼関係を築く武器とする

誰もが今、問題なく動いているものを変更していく事はストレスに感じます。しかし、AWS Gravitonを学べばわずかなコストとリスクを取る事で多くのワークロードにおいてよりよくなる事がわかります。お客様のよりよい環境に対しては、パートナー企業がリスクを担保し、主体となって導入する事が重要と考えています。

ただ、提案の結果、お客様は確かにメリットを享受できますが、パートナー企業はリスクを背負ってまで得られるメリットは何なのか?という疑問があるかもしれません。

私の考えるパートナー企業のメリットは「お客様から信頼される」という事です。ビジネスにおける信頼関係のメリットはいわずもがなですが、仕事が円滑に進み成果が出やすくなるのでパートナーの使命達成に必須の要素ではないかと思います。それほどにAWS Gravitonはよいものであると確信しています。

我々シーズは「ユーザー企業との信頼関係を築く武器」としてAWS Gravitonを採用しています。

Keynote with Dr. Werner Vogels at re:invent2023
Keynote with Dr. Werner Vogels at re:invent2023

もっとも危険な英語は ”私たちはいつもこの方法でやってきました” です。

AWS Gravitonの提案をインフラ改善の後押しとする

これまで多くの環境でAWS Gravitonを導入してきましたが、EC2のAWS Graviton化においては多くの障壁を経験してきました。その一番の原因が「モノリスEC2で何が動いているか把握できていない」という状況にあります。

この状況はお客様も「なんとかしないとなぁ」という課題感を持っておられる事がほとんどですが、なかなか腰をあげるのは難しいと思います。

つまりGraviton導入の課題は、適切なインフラ管理ができて無い事が原因と言えます。インフラ環境が適切に管理されている状況であればAWS Gravitonの導入はそこまで困難ではありません。

我々の会社では、このような状況に対するインフラ改善への「後押し」としてAWS Gravitonを据えています。

上記は、モノリス化したEC2を改善するためのシーズのオファリングフローです。

これまではインフラ改善としての提案のみでしたが、その先にGraviton化を行うという双方の目的が据えられる事でインフラ改善の後押しとしています。

最後に

Monday Night Live with Peter DeSantis キーノートでのAWS Gravitonの開発の思想を聞いた事で嬉しくなって私なりにAWS Gravitonを振り返ってみました。

2023年8月25日、弊社は AWS Graviton におけるサービスデリバリープログラム(SDP)認定を取得いたしました。 AWS Service Delivery Program(SDP) 認定はすごいという雑記
AWSさんからお墨付きをいただいた事で、これからもAWS Gravitonを使って様々な環境を改善していきたいと思います!


👉️ AWS Graviton のことなら acCloud にお任せください!
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